MMA&デリバティブズBG長メッセージ

地域最適化と高付加価値化の両輪で成長をめざす
三菱ケミカル株式会社
常務執行役員
MMA&デリバティブズ所管
黒川 聡

2026年9月掲載
*BG長はビジネスグループ長の略称です。
*本記事の内容、所属、役職等は取材当時のものです。

2026年9月掲載
*BG長はビジネスグループ長の略称です。
*本記事の内容、所属、役職等は取材当時のものです。

2035年のありたい姿を示した経営ビジョン「KAITEKI Vision 35(KV35)」および「中期経営計画2029」を策定してから1年9か月が経過しました。事業ポートフォリオを明確に定め、今年4月にはビジネスグループの再編を実施。グループ全体で「守り」から「攻め」へと転じる中、各ビジネスグループ長に、事業環境をどう認識し、いかに価値を創出していくのかを聞きました。

KV35策定以降、事業環境が激変しています

アクリル樹脂の原料となるMMA(メタクリル酸メチル)市場は、ウクライナ情勢に伴うエネルギー価格の高騰を契機に、欧州で生産・販売の撤退や縮小が相次ぎました。その結果、生産は中国へシフトし、中国は最新設備による高効率生産を背景に競争力を高め、輸出を拡大しています。これにより需給バランスが崩れ、市況は大きく下落しました。これに伴いKV 35も見直しを迫られ、当ビジネスグループの収益にも大きな影響が生じました。その結果、2026年3月期のコア営業利益は前期比372億円減少し、15億円の赤字となりました。
ビジネスモデルの課題も顕在化しています。当社は、MMA主要3製法を有する技術力とグローバルな供給体制を活かして世界シェア30%を維持してきましたが、関税や地政学リスク、物流制約などの影響で地域分断が進み、従来のビジネスモデルでは競争優位を維持することが難しくなっています。そのため、事業のあり方そのものの再構築が不可欠です。

反転への道筋は

地域最適化を目指して構造改革を進めています。2026年3月には台湾におけるMMAモノマーの製造・販売に関する共同出資関係の解消を発表しました。中国製品の流入が常態化する中で、原料供給や周辺のサポート体制を含めたバリューチェーン全体を踏まえ、“勝てる”地域に経営資源を集中していきます。収益改善には一定の目途がつきつつあるものの、構造改革の本格的な成果が表れるまでには1〜2年を要すると見ています。一方で、成長市場への展開も並行して検討しています。インドでは当社がMMAで5割、PMMAで3割のシェアを有しており、自動車産業などを中心に将来的な需要拡大が見込まれます。
同時に、ハードからソフトへの事業転換も進め、MMAの提供にとどまらず、MMAを「どのように使いこなすか」という価値提供へ軸足を移しています。MMAからPMMA、機能化学品に至るまで幅広いダウンストリーム(下流)領域で培ってきた様々な技術・知見を活かし、用途提案やソリューション提案を強化していきます。
また、当社は3製法を有することで、これまでに原料事情や地域特性に応じた柔軟な生産体制を構築してきました。この強みをさらに発展させ、自社製造にとどまらず、製法や技術のライセンス供与といった新たなビジネスモデルへの展開も視野に入れています。

MMAの素材特性を活かした価値創出へのコミットメント

アクリル樹脂(PMMA)は「プラスチックの女王」と呼ばれるほど質感に優れ、透明性や耐候性を兼ね備えた素材です。生体適合性にも優れることから医療用途や半導体材料等、幅広い分野で活用されています。また、熱分解によりモノマーへと戻せるリサイクル性を有し、資源循環の観点でポテンシャルの高い素材であると考えています。こうした特性を活かし、自動車外板への適用を目指し本田技研工業㈱と共同開発を進めています。採用されれば、軽量化はもちろん、ヘッドランプやテールランプに加えて車両全体のリサイクル性向上にも寄与します。このように、素材の持つポテンシャルを最大限に引き出し、お客さまへの価値提供につなげていきたいと考えています。加えて、当社の機能化学品との連携をさらに強化し、PMMAにさらなる付加価値を持たせ、用途の拡大と差別化を一層進めていきます。
循環型社会の実現に向け、PMMAの価値を社会実装していくことが使命です。積極的に用途展開を図り、収益性と成長性を両立するビジネスモデルへと進化させ、ステークホルダーの皆さまから信頼していただける事業となるべく変革を進めていきます。

【略歴】
1985年、三菱レイヨン(現・三菱ケミカル)に入社。PMMA耐衝撃性改質剤の研究開発、塩化ビニル改質剤「メタブレン」の生産技術を担当後、1994年より米国Metco North Americaでメタブレンの製造に従事。帰国後、広島事業所にてメタブレン製造課長を務めた後、同事業所の製造現場の改革を推進し、2014年より中国・広東省の恵州恵菱化成有限公司で董事総経理を務める。2016年より化成品事業部長、Mitsubishi Rayon Lucite Group 取締役を兼務。2017年、MMA・Asia本部長に就任し、2021年には三菱ケミカルメタクリレーツの取締役副社長に就任し、MMA・Asia Pacific本部長を兼務。
その後、大成ファインケミカル社を経て、2024年4月、三菱ケミカルグループ 執行役エグゼクティブバイスプレジデントに就任し、MMA&デリバティブズを所管。2025年4月より三菱ケミカル 常務執行役員(同領域担当)、現職。

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