イノベーション方針

化学産業が興って100年以上が過ぎ、多種多様な化学品が供給されることで人々の生活は便利で豊かになりました。しかし近年では化学産業が成熟し、新素材をつくるというアプローチでの新規事業開拓は非常に難しい時代になりつつあります。素材の開発のみならず、社会が抱える課題にソリューションを提供できるよう、イノベーション活動を推進していきます。

イノベーションのめざす姿

当社のイノベーションについて、2035年にありたい姿を描き、その実現のために2029年にあるべき姿を見据えました。多様化している顧客の課題や、持続可能な社会を実現するための課題を中心に据え、化学技術で課題解決を図ることで顧客や社会に価値を提供し続けていきます。

現在

2029年にあるべき姿

  • 事業モデルに適したイノベーション活動が行われ、より速く、大きな価値を生み出している。
  • 社内外の知的資産を、効果的かつ相乗的に活用している。
  • 課題の本質を的確に捉え、ソリューションを提供できる人材が活躍している。

2035年にありたい姿

当社のイノベーション活動が5つの注力事業領域で展開され、創出された価値が継続的な事業成長に貢献している。

4つの領域と戦略

対象とする市場や産業よってビジネスモデルが異なるため、イノベーションのモデルを顧客価値と技術を軸とした4つの領域に分類し、それぞれの特性に合わせた戦略に沿って活動を行っています。この活動を進める上で、従来培ってきた素材を作る力や分析技術に加え、自社保有のスーパーコンピュータを活用した計算科学も駆使しながら、研究開発のスピードを加速しています。

新用途開拓

新用途開拓では、既存の技術や製品を柔軟に組み合わせることで、顧客の課題に迅速かつ適切に対応することをめざしています。食の品質、モビリティ内外装など、時代に応じて変化する顧客価値を的確に捉え、自社の材料設計・解析・製品化技術などの強みを活かすことで開発速度を上げながら、より高い価値の創出を実現していきます。
これらの取り組みにより、従来の枠にとらわれない新たな用途の可能性を広げ、顧客にとって実用性と信頼性の高いソリューションをタイムリーに提供していきます。

次世代製品開発

次世代製品開発では、モビリティ、半導体、通信、再生医療など、ニーズが明確な市場を対象に、戦略的に技術開発を進めています。
主要顧客と開発ロードマップを共有し、将来のニーズや技術トレンド、当社の強みを踏まえて戦略を策定しており、市場や顧客の変化に応じて、ロードマップは随時更新していきます。この領域では、新素材の開発が技術的なブレイクスルーの鍵となっており、当社の強みと新たな技術を融合・昇華させながら、事業化に向けた取り組みを加速しています。

フロンティア

フロンティアは、市場全体としても将来像がまだ不明瞭ではあるものの、成長の可能性が期待される分野です。
現在は市場として萌芽的な段階ですが、当社は2035年頃の成長が期待される領域に注目し、当社の技術資産を活かしつつ、新たな事業機会を探索しています。これは、既存事業への脅威に対する取り組みの一つでもあります。この領域では、社外のリソース(大学、スタートアップ、他企業など)を積極的に活用することが鍵であり、自社のベンチャーキャピタルを通じたオープンイノベーションの機会探索にも注力していきます。

既存事業活動

既存事業活動では、既存事業の生産効率を高め、安定した製品供給を通じて収益に貢献することが求められます。これまでの知見や経験を活かしながら、ビジネスグループを中心に、顧客への価値提供を継続しています。
効率性と品質の両立を図りながら、事業の安定成長を支える重要な役割を担っています。

事業開発と研究開発を加速させるオープンイノベーション

三菱ケミカルでは、技術や知見を社外と「つなぐ」オープンイノベーションを推進しています。アカデミア連携・インダストリー連携・スタートアップ連携を高度な知識を持つ専門チームによって促進し、さらには各連携を組み合わせることで、グローバルな共創パートナーの多様な技術やアイデアを取り込みながら、社内の力と社外の力の掛け算により、価値を最大化しイノベーションの加速を実現しています。

革新的なアイデアや技術で新たなビジネスモデルを構築し、速いサイクルで事業価値を高める活動はスタートアップの得意分野であり、コーポレートベンチャーキャピタルによる連携・投資活動はオープンイノベーションの重要な施策の一つです。

コーポレートベンチャーキャピタル

コーポレートベンチャーキャピタル活動では、「当社のビジョンと整合性があるか」「競争優位性を得られるか」「どのような成長の可能性があるか」という観点で、新しい技術やソリューションを開発しているパートナー企業を選定します。そのパートナー企業との連携によって、当社がこれまでに蓄積してきた保有技術基盤を補完し、KAITEKI Vision 35で注力する5つの事業領域における迅速な価値創出につなげます。

出資先スタートアップ企業との協業一覧

スタートアップ企業 強みと協業内容
AddiFab ApS
  • 3Dプリンティングと射出成型を融合した特殊部品のアジャイルな生産技術
  • 3Dプリンティング用材料の共同開発(Nexa3Dによる買収完了)
DAIZ
  • 従来の食品を代替する植物性タンパク質由来食品
  • 代替肉用素材の開発
DIGILENS
  • 次世代の拡張現実(AR)/仮想現実(VR)デバイス向けホログラフィック技術
  • AR/VRデバイス向けプラスチック導光板の開発
ERIDAN
  • 低消費電力および周波数帯域の高効率的な利用を窒化ガリウム半導体で実現した5G無線通信用入出力プロセッサーの開発
  • 窒化ガリウム基板の5G通信向け用途開拓
FluenceAnalytics
  • 製造・研究での反応系の連続的なモニタリングと最適化
  • 研究開発の効率化と継続的なプロセス改善(横河電機による買収完了)
Lactips
  • フィルムおよびプラスチックを代替する水溶性のバイオ由来生分解性ポリマー材料
  • 顧客のニーズに適合したグリーンマテリアル(環境に優しい材料)の開発
Lingrove
  • 自動車・産業用木材に代わる植物由来の持続可能な複合材および材料
  • バイオベースの複合材料の開発
Myoridge
  • 製薬、再生医療、食品用途向けの特殊無血清細胞培地
  • 細胞培養関連市場向け培地、材料の開発
PRIMEROOTS
  • 従来の肉製品に代わる麹菌由来の代替食品
  • 代替肉用素材の開発と事業範囲の地理的拡大
Vartega
  • 炭素繊維廃棄物のケミカルリサイクルと製造プロセス
  • サプライチェーンの開発とパートナーシップ
BOSTONMATERIALS
  • 炭素繊維複合材料を垂直に配向させる技術プラットフォーム
  • 次世代材料とそのアプリケーションの開発
freshrtechnologies
  • 食品機能材と樹脂フィルムを組み合わせる製造プラットフォーム
  • 新しい食品包装のソリューションの開発
Licella
  • 使用済みプラスチックやバイオマスの革新的な油化技術
  • 使用済みプラスチックやバイオマスを原料に用いた油化技術の社会実装とリサイクル事業の拡大
  • 強み
  • 協業内容

全体を支えるテクノロジー・プラットフォーム(TPF)

三菱ケミカルは、社会の多様なニーズに応えるため、技術を7つのテクノロジー・プラットフォーム(TPF)に集約しました。それぞれのTPFは ①新たな事業、新たな商品の創出に向けた独自技術の進化 ②新たな価値や機能を生み出す技術ソリューションの提供 ③ サイエンスの深化と技術人材の育成 を目的として活動しています。

7つのテクノロジー・プラットフォーム(TPF)

図中の項目をクリックすると、説明を表示します。

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