TCFD提言に基づく報告
三菱ケミカルグループは、環境負荷削減や省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギー利用の推進、温室効果ガス(GHG)排出量削減に貢献する製品群の拡充など、気候変動関連の施策を充実化するとともに、情報開示を段階的に拡充し、企業価値向上に努めていきます。
三菱ケミカルグループは、2018年10月にTCFD※(気候関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言への支持を表明しました。
金融安定理事会が2015年に設置した組織。気候変動に関連するリスクと事業機会が企業財務にもたらす影響について、企業による投資家への自主的な開示を促すことを目的としており、2017年6月に情報開示のあり方に関する最終提言を公表した。
ガバナンス
当社グループは、取り組む重要課題(マテリアリティ)に「GHG低減」「環境インパクトの削減」「サーキュラーエコノミー(CE)」といった気候変動に関連する課題を定め、取締役会の監督のもと、当社の執行役等から構成するサステナビリティ委員会にて、定期的に進捗をモニタリングし、関連施策を着実に推進していきます。
| 体制 | 役割 | 活動内容 | |
|---|---|---|---|
| 取締役会 |
・経営の基本方針の策定 |
・執行役の執行報告を通じた監督 |
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| 取締役連絡会 |
・経営上の重要な情報の共有 |
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サステナビリティ委員会 [構成] 委員長:執行役社長 委員:執行役等 事務局:サステナビリティ部門 |
・当グループのサステナビリティに関する方針や関連事項の審議 |
・経営指標(MOS指標)によるモニタリング |
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役員報酬
当社は、執行役の報酬を構成する業績連動報酬を、年度ごとの目標値の達成状況の結果に応じて決定し、支払っています。評価は、経済効率性やイノベーションに加え、サステナビリティの向上に係る指標を用いるKAITEKI価値評価および個人評価にて決定しています。2024年度の業績連動報酬の評価指標のうちサステナビリティに関するものは、GHGの排出量削減を含む、KAITEKI価値評価の中で執行役が特に注力すべきものを選定しました。
戦略・リスク管理
気候変動に関連するリスク
当社グループは、シナリオ分析の考え方に基づき、2030年にかけて直面する気候変動による影響のインパクトを評価しています。
移行リスクは、国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオなどに基づき、評価した結果、特にインパクトが大きいリスクとして、炭素税負担の増加や、株式市場での気候変動対応の高まりなどを認識しています。
また、物理リスクは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5シナリオ等に基づき、評価した結果、異常気象による操業ロスを認識しています。
これらのリスクに対しては、適切な対応を講じていくとともに、継続的に状況の把握を行っていきます。
シナリオに基づくリスクの概要(特にインパクトの大きいリスク)
| リスク 区分 |
カテゴリー | 認識する リスク |
シナリオ※1に基づくリスクの概要 | 当社への影響 | インパクト※2 | 影響への対応状況 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 移行 リスク |
政策/規制 | 炭素価格上昇 | 炭素税が上昇することによる操業コスト増加 | 1.5℃ | 操業コストの上昇 | ++ | カーボンニュートラル実現に向けた基本方針に沿ったGHG排出量の削減 |
| 市場 | プラスチック製品の使用方法の規制 | プラスチック回収率が上昇することで石油化学製品のバージン需要減少 | 1.5℃ | 石油化学製品の需要減少 | + | カーボンニュートラル実現に貢献する事業への注力 | |
| レピュテーション | 株式市場での気候変動対応の高まり | 機関投資家が気候変動を重視する中、不十分な対応による時価総額が低下 | 1.5℃ | 時価総額の減少 | + | 気候変動などサステナビリティ情報の開示やエンゲージメントの充実化 | |
| 物理 リスク |
急性 | 異常気象による操業ロス | アジアでの洪水リスクが上昇することで工場の操業への影響が増大 | 4℃ | 沿岸地域の工場が災害により操業停止、その結果、売上減少、資産(生産設備や在庫)の棄損 | + | 大規模自然災害に備えた、被害の最小化と事業継続性の確保の推進 |
1 1.5℃についてはWEO(World Energy Outlook 2023)のNZE(Net Zero Emissions 2050)シナリオ、4℃についてはIPCC RCP 8.5シナリオなどをそれぞれ参照
2「当社への影響」によるインパクトについて、定量評価結果(2030年)を次のように表示。 +:100億円以上 1,000億円未満、++:1,000億円以上
移行計画
当社グループは、GHG排出量を2030年度に29%削減(2019年度比)、2050年に実質ゼロとするカーボンニュートラル(CN)達成をめざすという目標を設定し、ロードマップに沿って削減を行っていきます。
製造プロセスの合理化や、エネルギー転換を進めるとともに、今後のポートフォリオ運営にCNの視点を盛り込み、CNに移行する社会でも競争力のある企業をめざします。
気候変動に関連する事業機会
当社グループは、カーボンニュートラルに移行する社会でも競争力のある企業をめざし、 Visionとの整合性、競争優位性、成長性の基準を用いたポートフォリオへの変革を通じて、カーボンニュートラル実現に貢献する事業へ注力していきます。具体的には、新経営ビジョン「KAITEKI Vision 35」で示したグリーン・ケミカルの安定供給基盤、環境配慮型モビリティ、データ処理と通信の高度化、食の品質保持、新しい治療に求められる技術や機器などの注力事業領域について、事業規模の拡大、収益力を強化していきます。
加えて、CNおよびCE実現に向けた資源の有効活用や再生可能資源の活用に対するお客さまや社会からの要請が高まる中、原料転換を長期的な事業機会の一つとして捉え、強化していきます。
最近の成果として、茨城事業所ではENEOS㈱と進めていた廃プラスチックを油化する国内最大規模のケミカルリサイクル設備の建設が完成・試運転を開始し、CN・循環型社会の実現に向けて一歩前進しました。また、アラブ首長国連邦アブダビ首長国においてCO2とグリーン水素からポリプロピレンを製造する事業検討をAbu Dhabi Future Energy Company PJSC–Masdarおよび㈱INPEXと行っています。
リスクを識別、評価、管理するプロセス
ポートフォリオマネジメント
当社グループは、ビジョンに沿って、競争優位性を活かしながら成長性と気候レジリエンスを兼ね備えた事業ポートフォリオ運営を推進していきます。
リスク管理
当社グループは、全社的かつ総合的なリスク管理体制を整備、運用することで、先を見越したリスク管理と適切なリスクテイクを伴う経営を推進しており、サステナビリティに関連するリスクも、一体的な管理を志向していきます。
指標と目標
リスクと機会を評価する指標と目標
マテリアリティの進捗を測る経営指標(MOS指標)の中に、GHG排出量の削減割合を設定し、中期目標を掲げ、毎年進捗を評価していきます。
Scope 1、2、3の温室効果ガス排出量
報告内容
2024年度の実績は、データ集のGHG排出量をご参照ください。なお、GHG排出量は第三者保証を受けており、信頼性の高い情報の開示に努めています。