2035年のありたい姿を示した経営ビジョン「KAITEKI Vision 35(KV35)」および「中期経営計画2029」を策定してから1年9か月が経過しました。事業ポートフォリオを明確に定め、今年4月にはビジネスグループの再編を実施。グループ全体で「守り」から「攻め」へと転じる中、各ビジネスグループ長に、事業環境をどう認識し、いかに価値を創出していくのかを聞きました。
ホルムズ海峡封鎖により、原料調達を取り巻く不確実性が改めて注目されました
資源・エネルギー価格の変動、地政学リスクの高まり、日本国内需要の漸減など、ベーシックマテリアルズ事業は複合的な逆風に直面しています。とりわけホルムズ海峡封鎖リスクは、ナフサなどの原料調達や安定供給に直結する重要な経営課題として受け止めており、代替調達の検討や原料価格高騰に対するお客さまのご理解を得る取り組みに注力しています。
一方で今回の危機は、石油化学製品の持つ価値や、経済安全保障の観点からの石油化学産業の重要性を再認識する機会でもありました。こうした環境下において、基礎化学品*の安定供給という社会的役割を果たしつつ、収益性と持続性をいかに両立させていくかが、現時点における最大の課題であると認識しています。
一方で今回の危機は、石油化学製品の持つ価値や、経済安全保障の観点からの石油化学産業の重要性を再認識する機会でもありました。こうした環境下において、基礎化学品*の安定供給という社会的役割を果たしつつ、収益性と持続性をいかに両立させていくかが、現時点における最大の課題であると認識しています。
*ナフサを熱分解して得られる、プラスチックなどさまざまな化学製品の原料
石油化学業界は構造改革が求められています
これまで、西日本エリアでのエチレン製造設備の統合や、コークス・炭素材事業からの撤退など、大きな構造改革を決定してきました。これらはいずれも短期的な損益ではなく、「中長期にわたり事業が社会から必要とされ続けるためにはどうあるべきか」という視点からの判断です。当事業の経営を担う立場として特に重視したのは、当社グループ単独での最適にとどまらず業界全体での最適化が不可欠であること、経営資源を成長機会に再配分すること、そして供給責任を果たし得る現実的な事業規模を確保することです。守るべきものを明確にするための構造改革であり、コークス・炭素材事業からの撤退についても、不可逆的な環境変化を前提とした苦渋の意思決定であったと整理しています。
石油化学事業の分社化に向けた検討を開始しました
石油化学事業は経済と暮らしを支える社会インフラです。海外との競争が激化する中、日本の幅広い産業に素材を安定供給することは、経済安全保障と直結しています。日本がカーボンニュートラルを実現するうえでも、石油化学事業のグリーン化は欠かせません。こうした社会的使命を果たしていくためには、他社との連携を含めた業界再編が必要です。石油化学事業を分社化し、独立した事業体とすることで、連携パートナーとの合弁会社設立など、事業基盤強化に向けた構造改革に即応できる体制を整えていきます。
2026年度の事業戦略、特にグリーン化について
2025年度は操業の不安定化が業績に影響したことを重く受け止め、2026年度は安全・安定運転を最優先に高稼働運転を徹底し、コスト競争力がある基礎化学品供給基盤の再構築に注力します。設備・人材・運転データを含む現場力の底上げが、事業の持続性を左右します。またグリーン化については、使用済みプラスチックを油化する茨城事業所のケミカルリサイクルプラントの商業運転を着実に立ち上げ、付加価値を確保できる製品マーケティングと合わせ、現実的なスピードで実績を積み上げていきます。基礎素材だからこそ、バリューチェーン全体の変革を支える役割を担い、社会と産業の要請に応える事業への転換を進めていきます。
KV35実現に向けてどのようにコミットしていきますか
ベーシックマテリアルズ事業に課された使命は、社会の基盤を支える事業を、持続可能な形で次世代につないでいくことだと考えています。私は特に、現場を起点とした競争力の再構築と、従業員が誇りを持てる事業への転換を通じて、KAITEKIの実現にコミットしていきます。そのためには、お客さまに付加価値を正しく評価していただき、利益を生み出せる市場構造へと作り替えていくことが不可欠です。構造改革を進める過程では、守りから攻めへと発想を転じ、変化を恐れず挑戦できる組織文化が重要になります。ベーシックマテリアルズ事業が、KAITEKIを支える「なくてはならない土台」であり続けるよう、責任を持って舵取りを行っていきます。
【略歴】
1990年、三菱化成(現・三菱ケミカル)に入社。テレフタル酸事業に従事。2003年より三菱化学北京事務所副事務所長に就任。以降、寧波三菱化学副総経理、MCC PTA Asia Pacific Pte. Ltd. Director、寧波三菱化学総経理を歴任し、中国・アジアにおける事業運営に従事。2013年、化学品本部テレフタル酸部長、2015年、寧波三菱化学 総経理、2017年、石化企画部企画室長を経て、2019年に半導体ソリューション事業部長に就任し、以降、半導体関連の事業を担当。2024年4月、三菱ケミカルグループ 代表執行役エグゼクティブバイスプレジデントに就任し、ベーシックマテリアルズ&ポリマーズを所管。2025年4月からは三菱ケミカル代表取締役常務執行役員(同領域担当)、2026年4月より現職。