社外取締役座談会

2023年 9月発行 KAITEKIレポート2023より

真のグローバル企業へ飛躍するために、
監督機能のさらなる強化に努めます

経営方針「Forging the future 未来を拓く」の発表から3年目。真のグローバル企業に成長するための基盤整備から実行フェーズに移るにあたり、取締役会が果たすべき役割について、独立社外取締役が率直な意見交換を行いました。

社外取締役 報酬委員長
程 近智

社外取締役
菊池 きよみ

筆頭独立社外取締役 指名委員長
橋本 孝之

社外取締役 監査委員長
山田 辰己

モニタリング機能を発揮し
世界トップレベルの企業へと進化させていく

橋本 孝之の写真

橋本 指名委員会で選任したジョンマークの就任後を振り返ると、1年目は現状の可視化に取り組み、新経営方針として「Forging the future 未来を拓く」を発表。2年目は、「One Company, One Team」として、経営方針を実行するためにグローバルのマネージメントプラットフォームをつくることに注力。そして3年目の2023年度は、今後の成長に向けた実行フェーズの最初の年という位置付けにあり、これからはモニタリングが一層重要になると考えています。

菊池 私も、モニタリングを強化する必要性を強く感じています。ただ、非常勤の独立社外取締役という立場では、執行側と比べて情報の非対称性があるので、その難しさも感じています。この2年間は事業環境の変化が激しく、スピーディな経営改革が求められた中で、全てをモニタリングしきれなかった面があったと思います。その反省も含めて現在、当社は極めて重要な局面を迎えていますので、より厳しく監視・監督するのが私たちの役目だと考えています。

山田 監査委員会の委員長としては、監査の過程で得られる情報がかなり多いので、ここで得た情報をできるだけ取締役会と共有することによって、もう一段高いレベルで会社のあり方についての議論に努めたいと考えています。

 外部環境は、この1~2年で随分変わりました。その状況を踏まえて、モニタリングとしては、現実的な競合関係や経済的な環境などを考慮し、「それが答えだ!」という解を導き出すというよりは、現実的なチューニングが重要になると感じています。
 また、描いたビジョンの実現性は、執行役の力に掛かっています。執行力がどういった形で具体策となり、それがサステナブルで再現性があるケイパビリティに結び付いているか、監査委員会も含めて、いろいろな角度から見ていく必要があると思います。そこで、取締役会にも責任を持っている方々に参加してもらい、さまざまな議論を行う必要があるのではないでしょうか。

橋本 執行力は、とても重要なポイントですね。そこで今考えているのは、取締役会や取締役連絡会にも、できるだけ執行役に参加してもらうことです。直接話を聞くことで、人物評価も含めて何をしているのか理解する機会を増やそうと思っています。やはり、間接的に聞いたレポートだけでは、わからないところがありますからね。
 コロナも明けたので、海外現地法人を訪れて話を聞くのも、一つの手段だと思っています。海外の人たちはストレートに話をしてくれますので、その内容もモニタリングには有効ではないでしょうか。会議室の中で配られるレポートだけでは、理解するのがなかなか難しいところがあるので、そこに一歩踏み込んでいきたいと思っています。

山田 辰己の写真

山田 執行力に加えて、従業員一人ひとりの腹落ち感も重要だと私は感じています。これから経営方針が実行フェーズへ入ったときに、全ての従業員がこの改革が必要であることをきちんと理解し、挑戦することに腹落ち感があって初めて、モチベーション高く取り組むことができると思うのです。CEOは今、定期的にタウンホールミーティングを実施していますが、その効果をより浸透させるには、今後も継続して従業員とのコミュニケーションを図ることが必要ではないかという感覚を持っています。

菊池 従業員が腹落ちするためにも、現状の戦略をはじめとする大きな方向性を、具体的な施策に落とし込んでいくことが重要ではないでしょうか。モニタリング・ボードとしては、高い緊張感と強い危機意識を持ってモニタリングすることの必要性を感じています。
 また、女性の取締役は現在私一人なので、ダイバーシティの面から2023年度は女性管理職の方々とお話しする機会を、より多くつくっていきたいと考えています。

橋本 モニタリングの指標としては、ジョンマークの2023年の年度目標として指名委員会がお願いした4点が参考になると思います。
 第一は、株主目線の経営です。これは報酬制度とも連動しており、長期的なインセンティブに株価を考慮する内容が入っています。単年度においても、株価を意識する評価システムになっています。第二がグローバルマネジメントの最適化です。コスト削減によって利益を生む、あるいは利益が出ない事業は切り離す。第三が成長戦略の実現で、スペシャリティマテリアルへシフトするポートフォリオマネジメントと研究開発をもとにした将来に対するイノベーション。そして第四が、グリーン・トランスフォーメーション、カーボンニュートラルにフォーカスして、世界中から注目されるロールモデルの一つになることです。例えばDJSIなど、知名度の高いベンチマークとの比較で三菱ケミカルグループの立ち位置を明確にするといったもので、その推進に向けた組織体制の整備とインベストメントを、毎年どういう形で行うのかといったことについてフォーカスしています。この点については、かなり踏み込んだKPIを設定しています。
 基本的には、今申し上げた内容に基づき、取締役会でモニタリングしていきたいと思います。

山田 これからはサステナビリティの開示についてもモニタリングが必要だと感じています。欧州ではCSRD※1により、サステナビリティの開示が強化されます。ISSB※2でもS1の「サステナビリティ全般に関する基準」と、S2の「気候変動に関する基準」が2023年6月に公表されました。サステナビリティの要請に対して、企業がどのように対応しているのか、その開示が世界中で求められています。こうした要求にも当社が的確に対応できるよう、支援していきたいと思います。

※1 企業持続可能性報告指令
※2 国際サステナビリティ基準審議会

日本固有の事情も踏まえつつ
グローバル企業としてのサクセッション・プランを確立

程 近智の写真

橋本 皆さんは、将来に向けて重要な取り組みとなるサクセッション・プランについて、どのように捉えられていますか。もし、今CEOに不測の事態が発生したら、誰が代行を務めるのか。あるいは3年後、5年後といった中期から長期の視点に立つと、経営幹部候補としてどのような人材がいて、現状としてどのようなケイパビリティがあり、今後に向けてどのような育成プランが必要なのか。私は、こうした可視化が進み始めたと感じています。具体的な取り組みとしては、ジョブ・アサインメントや教育プログラムの確立などです。これは、CEOをはじめとするCXO全てに当てはまる話です。

 リーダーシップ育成やサクセッションは今、上場企業で真剣な取り組みが始まっています。大きく変わってきているのは、属人的だったものを公平なものにするための明確な仕組みを構築し、しかも最強のチームをつくるという前提で体制の整備が進んでいることです。ただ、多くの会社では、未だに属人的なところが残っているように見受けられます。それに比べると当社は、目標に掲げた公平な仕組みが現実レベルで動いており、世界に誇れる体制が実現していると思います。
 重要なのは、CEOをはじめとする幹部候補を、次期から数年先まで見すえた幅広い層で充実させ、育成に取り組むことです。橋本さんや私が在籍した企業をはじめ、多くのグローバル企業では、30代ぐらいから将来の社長候補をモニタリングして育成に取り組んでいます。当社も、次々世代まで見すえた人材育成が行える仕組みになりつつあるように感じています。

菊池 この会社に関わるようになり、執行役や従業員の方々と接して感じるのは、地頭が良くて、優秀な方々を採用しているということです。ただ、これまでは、グループ全体としてそうした人材を活かすシステムがなかったように思います。現在、CEOのサクセッションを含む人材戦略の策定に取り組んでいますが、これからは若いうちから教育する制度をつくり、次期CEOやCXOを育成することが必要ではないでしょうか。当社はグローバルな会社ですから、若手には早め早めに外の世界を経験させて能力を高め、再度会社に戻って貢献してもらうことも有効だと思います。

菊池 きよみの写真

橋本 確かにこれまでは、菊池さんがおっしゃった通りだと思います。そうした経緯を人事に聞いてみると、次期幹部の候補者が見つかっても、事業部が人材を囲い込むといった状況が昔はあったようです。それが今は、企業の未来を担う人材育成への理解度が全社レベルで高まったことで、事業部の考えも変わってきたそうです。次期幹部候補になった人がいれば、事業を変える、あるいは海外へ行かせる、といった対応も増えているようなので、今後の進展に期待したいですね。

山田 当社は、「One Company, One Team」のもと、グループ会社が一体となって動き出しました。今後さらなるグローバル企業をめざすには、海外拠点への注力も必要でしょう。例えば、生産拠点は海外含めグローバルに展開していますが、開発拠点は日本に集中しています。こうした状況における企業のトップが、どういう役割ないしは知識を持っている人がいいのかを考えると、外資系などのグローバル企業とは求める内容が異なると思いますが、橋本さんはいかがお考えでしょうか。

橋本 おっしゃるように、グローバル企業といっても現状は日本が中心です。海外拠点も、多くは買収した企業です。こうした環境の中で、常にグローバルを視野に入れて迅速に意思決定して実行できるトップが、一足飛びに誕生するのは難しいと思います。ただ、真のグローバル企業をめざす中で、あるべきトップの姿を追求して育てていくべきだと思います。
 例えば、一気にグローバルのトップになるのは難しいとしても、リージョナルヘッドクオーターのトップに就任して経験を積むことは、将来に向けての大切なステップになると思います。人材育成は、目線を高く、視野を広く保って取り組むべきものだと思っていますので、こうした育成制度によって次代のCXOを確実に育成し、真のグローバル企業への飛躍を支援していきたいと思います。

ページトップ