CTOメッセージ

社会のニーズを踏まえ、当社の技術や強みを活かしながら、
スピーディにイノベーション成果を具現化していきます
三菱ケミカル株式会社
常務執行役員
チーフテクノロジーオフィサー(CTO)
葛城 俊哉

2025年10月掲載

2025年10月掲載

三菱ケミカルグループは、2035年の社会課題を見据えた「KAITEKI Vision 35(KV35)」を策定し、「グリーン・ケミカルの安定供給基盤」「環境配慮型モビリティ」「データ処理と通信の高度化」「食の品質保持」「新しい治療に求められる技術や機器」の5つを注力事業領域として掲げています。これらの事業領域において、イノベーションを生み出す速度および確度を上げるために、三菱ケミカルは大きな2つの方針を設定しています。

方針① 市場や事業環境に応じたイノベーションの戦略策定・遂行

一つ目は、イノベーションのモデルを顧客価値と技術を軸とした4つのイノベーション領域に分類し、各領域のビジネスモデルに合致した戦略を遂行することです。私たちはそれぞれのイノベーション領域を、①新用途開拓領域、②次世代製品開発領域、③フロンティア領域、④既存事業活動領域、と呼んでいます。
 新用途開拓領域では、既存の技術や製品を柔軟に組み合わせることで、複雑化・高度化する顧客課題に対して迅速にソリューションを提供します。ここでは、製品単位ではなく市場単位でニーズを捉え、複数の技術や製品を横断的に活用することが求められます。スピードと柔軟性が鍵となるこの領域では、社内の技術プラットフォームや製品を有機的につなぎ、顧客価値を最大化することをめざします。
 次世代製品開発領域では、注力事業領域における将来ニーズと技術トレンド、そして当社ならではの技術の強みを踏まえて開発ロードマップを策定し、社内および主要顧客と共有した上で中長期的な製品開発を進めます。ここでは、当社の強みである素材設計やプロセス技術を活かしながら、将来の市場要求に先回りする形で技術を磨き上げていきます。市場の変化に応じて柔軟にロードマップを見直し、事業化に向けた道筋が回り道とならないようにすることも重要です。
 フロンティア領域では、まだ市場として萌芽的な段階であり、技術的な確立もこれからという分野に対して、将来の成長可能性を見据えた探索的な取り組みを行います。ここでは、社内の既存資産にとらわれず、社外リソースやスタートアップとの連携を積極的に活用しながら、未知の領域に挑戦していきます。既存事業の延長線上にない価値を見出すことが、この領域の本質です。
 既存事業活動領域では、既存の製品や事業の生産性向上や、安定供給、品質向上を図ります。この領域では、効率性と信頼性を重視した技術開発が中心であり、他の領域とは異なる視点でのアプローチが求められることから、事業側がイニシアチブを取って研究開発を進めています。

方針② 化学業界を牽引するイノベーション人材の育成

二つ目の方針は、課題の本質を見究め、質の高いソリューションを提案できるイノベーション人材の育成です。社会課題の解決に寄与する新しい価値を創出するためには、単なる技術力だけでなく、顧客のニーズを深く理解し、技術を通じて本質的な解決策を導き出す力が必要です。「新製品を世に出すこと」をゴールとするのではなく、何が世の中の課題解決に役立つのかという視点である「ソリューションマインド」を持つことが重要なのです。また、最近目覚ましい進化を遂げている生成AIは、今後のイノベーションや事業活動を大きく左右する存在になりつつあります。こうした状況を踏まえ、研究者にはAIに使われる側になるのではなく、AI を使って意思決定する側になってもらう必要があります。ソリューションに強くコミットするマインドの醸成とデジタルへの習熟、この二つを柱として、化学業界のイノベーションを牽引する人材の育成に力を注いでいきます。
 これら2つの方針を軸に、三菱ケミカルは戦略・技術・人材を融合させ、イノベーションによって世の中の課題解決に役立つソリューションを提供することで、KAITEKIな未来の実現をめざします。

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