イノベーション戦略
2024年 9月発行 KAITEKIレポート2024より
イノベーションの基本戦略
三菱ケミカルグループが取り組むべき課題と方針は、以下の2点です。
- 持続可能な社会の実現に向けて、環境負荷低減を図るべく、私たちの生活を支え、豊かにする化学素材およびそれらの製造プロセスのグリーン・トランスフォーメーション(GX)を追求します。
- 高度化する社会のニーズに沿って、スペシャリティマテリアルズやソリューションを提供することで、顧客の事業活動に貢献します。
当社グループは、注力市場へ重点化したイノベーション活動をより戦略的に行う目的で、2023年に研究開発組織をビジネスグループ直下の組織とコーポレート組織に分割しました。ビジネスグループとコーポレートの役割を明確化し、事業の特性に合わせて、技術開発やオープンイノベーション、知財活動等を機動的に展開することで、より大きな価値をより速く生み出していきます。
取り組み方針
GX
社会インフラや生活を支える素材としてのプラスチックの重要性は今後も変わらないと想定される一方で、素材の生産や廃棄に伴う温室効果ガスの排出、廃プラスチックによる環境被害の問題が顕在化しています。これらの課題に真摯に向き合って解決していくことが、化学産業に携わる私たちの使命です。
化学素材メーカーにとって、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現には、これまで培ってきた触媒やバイオ技術、分離・精製等のプロセス技術が大きく貢献すると期待されます。一方で、多様な素材の存在は、リサイクルにおける障壁になりかねず、循環型社会の実現・推進には、素材の種類を減らすことが必要です。リサイクル性を考慮した素材のニーズが高まっていますが、表面加工や構造設計による物性制御技術が今後重要になってくると考えています。
スペシャリティマテリアルズ事業
社会の成熟に伴う市場の細分化、消費者の志向の多様化により、素材メーカーを取り巻く環境も変化してきました。スペシャリティマテリアルズ事業において、顧客が求める機能を充足しているか、その検証のための評価基盤技術を保有していることが重要ですが、事業ごとにビジネスモデルが異なるため、研究開発に期待される役割や貢献のあり方も大きく変わります。エレクトロニクスやモビリティなど、顧客の要求事項に応える製品や技術をタイムリーに提供していくことが求められる次世代品開発型の事業もあれば、自社製品にこだわらず、必要な材を組み合わせることで新たな価値を発掘していく用途開拓型の事業もあります。多様な事業環境に臨機応変に対応すべく、製造・販売・技術開発の各役割を明確にし、事業化を推進します。
オープンイノベーションと基盤技術
オープンイノベーション
オープンイノベーションの最大の目的は、社外との連携を通じて最新技術や知見に迅速にアクセスし、製品・サービスの開発スピードを向上させることです。また、複雑で変化の激しい時代において、私たちが見通す将来の姿とは異なるシナリオへの対応力も重要です。革新的なアイデアや技術で新たなビジネスモデルを構築し、短期的に事業価値を高める活動はスタートアップの得意分野であり、コーポレート・ベンチャー・キャピタルによる投資活動はオープンイノベーションの重要な施策の一つです。
出資先スタートアップ企業との協業一覧
スタートアップ企業 | 強み | 協業内容 |
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![]() AddiFab ApS |
3Dプリンティングと射出成型を融合した特殊部品のアジャイルな生産技術 | 3Dプリンティング用材料の共同開発(Nexa3Dによる買収完了) |
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従来の食品を代替する植物性タンパク質由来食品 | 代替肉用素材の開発 |
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次世代の拡張現実(AR)/仮想現実(VR) デバイス向けホログラフィック技術 | AR/VRデバイス向けプラスチック導光板の開発 |
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低消費電力および周波数帯域の高効率的な利用を窒化ガリウム半導体で実現した5G無線通信用入出力プロセッサーの開発 | 窒化ガリウム基板の5G通信向け用途開拓 |
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製造・研究での反応系の連続的なモニタリングと最適化 | 研究開発の効率化と継続的なプロセス改善(横河電機による買収完了) |
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フィルムおよびプラスチックを代替する水溶性のバイオ由来生分解性ポリマー材料 | 顧客のニーズに適合したグリーンマテリアル(環境に優しい材料)の開発 |
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自動車・産業用木材に代わる植物由来の持続可能な複合材および材料 | バイオベースの複合材料の開発 |
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製薬、再生医療、食品用途向けの特殊無血清細胞培地 | 細胞培養関連市場向け培地、材料の開発 |
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従来の肉製品に代わる麹菌由来の代替食品 | 代替肉用素材の開発と事業範囲の地理的拡大 |
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炭素繊維廃棄物のケミカルリサイクルと製造プロセス | サプライチェーンの開発とパートナーシップ |
注力市場に対応するMCGグループの製品とそれを下支えする基盤技術
事業ごとにビジネスモデルは異なり、R&D組織に期待される役割、貢献のあり方も変わります。市場に対する洞察や攻略のためのロードマップの共有、ビジネスグループとコーポレートでの適切な役割分担と連携が必要です。MCGグループでは、顧客やパートナーにとって魅力的かつ関係を強化したくなる技術の構築をめざし、獲得した技術や知見をビジネスの最前線へ適用・フィードバックすることで、MCGグループの製品群を支えています。
注力市場に対応するMCGグループの技術・製品
EV/モビリティ |
デジタル |
食品 |
メディカル |
建設・インフラ |
消費財 |
産業 |
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主なトレンド |
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MCGグループの技術・製品 |
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