PMMAケミカルリサイクル。進化する素材のサステナブル化

PMMAケミカルリサイクル
進化する素材のサステナブル化

2025.02.10
 / TEXT BY MCG
※本記事の内容は公開時点のものです。

世界全体での需要が300万トンを超えるとされるアクリル樹脂「PMMA」。優れた透明性・耐候性を持つプラスチックで、自動車のテールランプレンズ、看板、水族館の水槽、塗料、建材など幅広く使われています。その原料となるメタクリル酸メチル「MMA」で世界トップシェアをもつ三菱ケミカルグループ(以下、MCGグループ)では、使い終わったアクリル樹脂をケミカルリサイクルによってMMAモノマーに再生し、そのリサイクルモノマーを原料にアクリル樹脂を生産する取り組みを進めています。

マイクロ波を使ったケミカルリサイクル

アクリル樹脂は、熱分解により原料である MMA に戻る特性をもち、ケミカルリサイクルに適した素材です。MCGグループが取り組んでいるのは、マイクロ波を利用したケミカルリサイクル。マイクロ波は、家庭用電子レンジや通信分野で使われてきた電磁波で、物質を直接、選択的に加熱できる特徴があります。MCGグループは、2021年からマイクロ波化学株式会社と研究開発を進め、マイクロ波を使ってアクリル樹脂を熱分解するリサイクル技術を確立してきました。また、ケミカルリサイクルの設備は電気で稼働するため、将来的には再生可能エネルギーを使用することで製造時の二酸化炭素排出量を削減し、環境負荷低減に貢献することが期待できます。

ケミカルリサイクルプロセス

PMMAケミカルリサイクルの特徴

回収されたアクリル樹脂(PMMA)は、メーカーや製法、色、分子量、劣化の有無、微量添加物の種類を問わずリサイクル可能です。ケミカルリサイクルによって再生されたMMAモノマーは従来品と同等の品質を持ち、そのMMAを使用して製造されたアクリル樹脂も新品と同等の性能・品質を有します。特に、厳しい光学性能が求められるレンズや導光体においても、従来品と変わらず使用できます。また、再生されたアクリル樹脂は繰り返しリサイクルすることが可能です。

ケミカルリサイクルPMMAの光学特性例

循環型ビジネスモデルの構築に向けて

MCGグループでは、使い終わったアクリル樹脂製品を幅広く回収しリサイクルするビジネスモデルの構築に取り組んでいます。廃アクリル樹脂は、自社の製造現場から出る廃材に限らず、広く市場から回収することを想定し、多くの企業や団体と協力して実証試験や取り組みを進めています。たとえば、本田技研工業株式会社との「テールランプ to テールランプ 水平リサイクル実証試験」、東京海上日動火災保険株式会社との「使用済み自動車からの回収実証試験」、アクリルグッズ等再生利用促進協議会との「アクリルキーホルダーやアクリルスタンドの回収・再利用活動」、株式会社Chaintopeと「ケミカルリサイクルを対象としたトレーサビリティシステムの実証試験」などです。こうした取り組みを通じて、マーケットニーズにあった循環型ビジネスモデルの構築を目指しています。

イノベーションを加速し、素材のグリーン化を推進

MCGグループでは、環境に配慮した素材づくりを推進するため、積極的に技術開発を進めています。廃アクリル樹脂のケミカルリサイクルのほか、既存の製造プロセスに植物由来原料を適用するMMAモノマー製造技術や、発酵法を用いて植物由来原料から直接MMAモノマーを製造する技術の開発など素材のグリーン化を進めています。これらの革新的な技術開発を通じてMMAおよびPMMAの環境負荷を低減し、より持続可能な素材の提供を目指しています。

サステナブルMMA

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