「半導体」微細化・省電力化の課題に応える素材ソリューション

半導体
微細化・省電力化の課題に応える素材ソリューション

2026.10.30
 / TEXT BY MCG
※本記事の内容は取材当時のものです。

スマートフォンからデータセンターにいたるまで、現代社会のあらゆるインフラを担う半導体。その進化は今、「原子レベルの寸法=極限の微細化」に近づいています。こうした中、三菱ケミカル(MCC)では、半導体の製造に欠かせない「EUVドライレジスト」や、次世代パワー半導体向けの「GaN(窒化ガリウム)基板」をはじめ、さまざまな先端材料を提供・開発しています。

現代社会のほぼすべての産業を支える半導体

日常で欠かせないスマートフォンや薄型テレビ、ハイブリッド車・電気自動車(EV)、さらには生成AIの膨大な計算を処理するデータセンターまで、あらゆるテクノロジーの心臓部に「半導体」が存在します。半導体とは、電気を「流す(導体)」性質と「流さない(絶縁体)」性質の両方を併せ持つ材料のこと。この特性を利用して電気の流れを制御することで、「スイッチング(切り替え)」「増幅」「データの記憶(メモリー)」といった、情報処理の基礎となる働きを実現しています。人間の指の爪ほどの小さなチップ上に、ナノメートル(1nm=10億分の1m)単位の微細回路が数十億〜数千億個の規模で刻み込まれており、社会インフラを制御する「頭脳」として不可欠な存在となっています。

1枚のウエハがチップになるまで

半導体チップの製造は1,000工程を超える精密プロセスの集合体であり、大きく「前工程(回路形成)」と「後工程(組み立て・保護)」に大別されます。製造装置は、大きいものでは建物2階分に相当する高さを持つものもあります(図「製造装置」参照)。MCCグループは、半導体の製造に欠かせない高機能材料に加え、半導体製造装置を構成する材料や、精密洗浄、超純水・排水処理、薬液供給、メンテナンスなどのサービスを提供し、半導体の高性能化・高精細化を支えています。

「半導体」製造工程
「半導体」製造装置

なぜ半導体は進化し続けるのか?

半導体が進化し続ける背景には、より高い性能と低い消費電力を両立させたいというニーズがあります。その進化は「密度」「寸法」「精度」の3軸で整理できます。

半導体チップ

密度(微細化): 回路をより細かく描き、同じ面積のチップに刻めるトランジスタの数を増やすことで、情報処理能力を高めます。

寸法(構造変化): 信号が通る配線距離が長いと、信号の遅延や熱としてのパワーロス(電力損失)が発生します。チップ同士の配置を限界まで近づけたり(3D積層やHBM)、配線を短縮したりすることで「高速化」と「省エネ」を両立させます。

精度(位置合わせ): ナノメートル単位で回路を描くためには、光の波長や材料の歪みを極限まで抑える高い精度のコントロールが求められます。

しかし、従来技術でのアプローチは、こうした「密度」「寸法」「精度」を追求するなかで、以下のように物理的・材料的な限界に直面しています。

● 物理的な限界:既に1nm(ナノメートル)と原子に近いレベルに達しており、これ以上の微細化は困難を極めます。(原子はおよそ0.1~0.5nm)

● 材料的な限界:より多くの回路形成とデータ通信をするには、熱制御が大きな壁になります。例えば、一般的なPCのCPUに使われる半導体(3nm~7nm)でも、100℃以上まで発熱し、効率の高い水冷が増加しています。

三菱ケミカルが取り組む新たな材料技術の開発

こうした半導体の進化を阻む課題を乗り越えるためには、従来技術の延長線上だけではなく、新たな材料技術が不可欠です。

三菱ケミカルでは、半導体のさらなる微細化と電力効率向上という課題の解決に向けて、先端材料技術の開発を進めています。

「EUVドライレジストプリカーサー」 - さらなる微細化に挑む、新たな材料技術 半導体の性能向上には、チップ上の回路をより細かく、精度よく形成する技術が欠かせません。現在主流となっているのは、液体状のレジスト材料をウエハ上に塗布して回路を形成する「ウェットプロセス」です。しかし、回路の微細化が一段と進む中、より高い解像度に対応できる新たな材料とプロセスが求められています。

その有力な選択肢として開発が進められているのが「EUVドライレジスト」です。ドライレジストとは、液体ではなく気体状の原料を用い、化学反応によってウエハ上にレジスト膜を形成する技術です。膜の厚さや組成を精密に制御できるため、より微細で精度の高い回路形成への活用が期待されています。こうした特長から、EUV露光によるさらなる微細化や高解像度化に向けた技術として注目されています。

この薄膜形成に用いられる気体状の原料が、三菱ケミカルが提供する「EUVドライレジストプリカーサー」です。三菱ケミカルは、プリカーサーの材料開発を通じて、次世代の半導体製造を支える技術の実現に取り組んでいます。

「GaN(窒化ガリウム)基板」 - さらなる電力効率を追求する、もう一つの主役 半導体の進化におけるもう一つの課題が「電力の制御」です。生成AIの急速な普及によりデータセンターの電力消費量が急増する中、電力損失(パワーロス)をいかに抑えるかが重要になります。

こうした背景から、従来のシリコン(Si)に代わるパワー半導体材料として、「GaN(窒化ガリウム)」の活用が期待されています。

GaNはシリコンと比べて高い耐電圧性、低い電力損失、高速動作を実現し、省エネルギー化と機器の高性能化に貢献する次世代半導体材料です。このGaNデバイスを支える重要な要素が、土台となる「GaN基板の結晶品質」です。結晶構造内に微細な「欠陥」が存在すると、そこから漏れ電流や発熱が発生し、デバイスの耐久性に影響を与えます。

三菱ケミカルは、永年培ってきたアモノサーマル成長技術(SCAAT™-LPなど)を用いることで、高品質で電力効率が高い大口径GaN基板(6~8インチ)の実用化に向けて取り組んでいます。

化学の力で半導体の未来を切り拓く

半導体の進化は、回路設計や露光装置の進歩に加え、材料設計が極めて重要な役割を果たしています。

三菱ケミカルは、前工程の合成石英粉やレジスト用ポリマーから、後工程の封止用エポキシ樹脂、そしてEUVドライレジスト用材料やGaN基板にいたるまで、半導体製造の主要工程を支える幅広い材料・ソリューションを展開しています。会社や事業部の枠を超えた連携体制のもと、製造工程全体を俯瞰したアプローチにより、歩留まり向上や次世代デバイス開発における課題に対応する材料ソリューションを提供しています。経営ビジョン「KAITEKI Vision 35」において、「データ処理と通信の高度化」を注力事業領域のひとつに掲げており、これからも材料技術の追求を通じて半導体産業の発展と持続可能な社会の実現に貢献していきます。

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