三菱ケミカルグループ株式会社

KAITEKI Solution Center
人工光合成~CO₂を資源に変える夢の技術~

人工光合成
~CO₂を資源に変える夢の技術~

Feb. 1, 2023 / TEXT BY YUYA OYAMADA / ILLUSTRAIONS BY SHINJI HAMANA
※ Mar. 26, 2021 の記事を更新しました。

  • 人工光合成は、太陽光エネルギーを使って水から生産したクリーンな水素を活用し、工場や発電所などから排出される二酸化炭素をプラスチック等の原料となる基礎化学品に変換する夢の技術です。
人工光合成イメージ写真

三菱ケミカルは、2012年10月に設立された人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)の一員として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の人工光合成プロジェクトに参画し、国内の化学メーカーや大学・国研等の研究機関と共同開発を進めてきました。
人工光合成では、太陽エネルギーを利用して水から水素を取り出します。その水素と発電所や工場から排出される二酸化炭素を使ってオレフィンを製造することにより、従来は二酸化炭素を排出していた化学品製造プロセスを二酸化炭素の吸収プロセスへと大きく転換します。
三菱ケミカルは、人工光合成の3段階のプロセスすべての技術開発に取り組んでいます。

人工光合成の3つのプロセス

1. 太陽光と光触媒を使って、水を水素と酸素に分解
2. 分離膜を使って、発生した水素と酸素の混合気体から水素を分離
3. 触媒技術を使って、水素と二酸化炭素を反応させてオレフィンを製造

人工光合成の3つのプロセス

太陽光と光触媒を使って、水を水素と酸素に分解

水を水素と酸素に分解するプロセスでは、「光触媒」が重要な役割を担います。水に浸したシート状の触媒に光をあてると、電気なしで水を水素と酸素に分解します。太陽光エネルギーを活用するので、生産段階で二酸化炭素は発生しないことも特長です。人工光合成においては、太陽光エネルギーからどれだけの効率で水素を作り出すことができるかという「エネルギー変換効率」が重要で、大幅なコストダウンが期待される大面積で生産することが可能な光触媒シートを用いて、2024年4%、2030年10%の変換効率の達成とそれを用いた数万平方メートルの屋外試験による実証を目標に研究を進めています。人工光合成の実装に向けて、同プロジェクトの光触媒は、世界をリードする技術として注目されています。

分離膜を使って、発生した水素と酸素の混合気体から水素を分離

水素と酸素の混合ガスは爆発を起こしやすいため、社会実装において、水素と酸素を安全に効率的に分離させることが非常に重要です。同プロジェクトでは、高機能の「分離膜」(混合ガスから水素を分離するもの)の開発だけでなく、安全性の高い分離モジュールの開発も行っています。

触媒技術を使って、水素と二酸化炭素を反応させてオレフィンを製造

分離した水素を二酸化炭素と反応させることで、プラスチック等の原料となるオレフィンを製造するために重要なのが、「合成触媒」です。高収率・高生産を実現する触媒とプロセス技術を開発し、すでに小型パイロットスケールでの実証実験に成功しています。この一連のプロセスで生産されるオレフィンはプラスチックの原料となります。

CO₂を資源としてつくられるプラスチック製品

2022年2月、NEDOから公募された「グリーンイノベーション基金事業」に対して、「人工光合成型化学原料製造事業化開発」を提案し採択されました。これにより社会実装に向けて人工光合成プロジェクトは次のステージに移行しました。三菱ケミカルは、このプロジェクト参画の大学及び他社の研究機関と協力しながら、これまで培ってきた石油化学品の製造技術や触媒開発技術を結集させ、カーボンニュートラル実現に向け、石油資源からの原料転換をはかり、二酸化炭素を用いたプラスチック製造技術開発を推進していきます。

トップページへ戻る

人工光合成の3つのプロセス